コラム46:2回目の保活
2015.11.27 事務局員 長井 健治
2014年12月末に2人目の子どもを授かり我が家は益々にぎやかになりました。私たち夫婦はともに仕事をしているため子どもたちと過ごす時間は限られており、毎朝保育園へ送り終えるまでの慌ただしさには慣れることはありません。子どもたちはそんな親のイライラも何食わぬ顔。それぞれに園での生活を楽しんでいる様子で、園に到着するなり父親の存在を忘れ保育士や友だちの輪の中に駆けていきます(下の子は保育士に抱っこされた瞬間に「お父さんまたね」って顔をします)。
前回2014年2月のコラムに保育園の待機児童について書かせていただきました。各地で保育園を増やす運動が取り組まれていますが、その後も保活(保育園探し)の大変さはそれほど変わっていないようです。私自身、2回目の保活は上の子のときとは比べようもないくらい神経を使いました。夫婦で働きながら一人、二人と子どもを産み育てているのだから国からは表彰こそされてもいいと思いますが、実際には、新しい生命を社会では受け入れてくれないのかというくらい心配ばかりの保活でありました。
上の子と同じ保育園に決まらなかったら朝夕の送り迎えはもとより、園行事への参加の調整はどうなるか、そもそも認可保育所でない保育園に決まった場合子どもを安心して預けられるのだろうか、認可外となったら高額の保育料は支払えるだろうか、など不安は強くなるばかり。さらに下の子の入所が決まらない状態が続くと上の子の保育継続までが難しくなってしまうこともあり、家族の将来が下の子の保育園入所如何にかかっているといっても言い過ぎではなかったと思います。
幸いにして下の子も上の子と同じ保育園に入所させることができ言葉にできない安堵感に包まれた一方で、結局のところほとんど同じ状況の家族間で椅子取りゲームをしている現状では運がよかった悪かったと結論づけて自分を納得させることしかできずすごく違和感を覚えます。
先日、保育園の0歳児クラスの父親で懇親会を開いた際にも保活の体験談が話題になりました。「今の住所にずっと住んでいるが住民票は実家のままだった。入園申込みに際して異動届を出したけど減点ポイントにならないか不安だった」「審査が通りやすくなるように役所の保育課に複数回メールを出した」「新制度が始まって兄弟ポイントが下がるらしいので、下の子が生まれたときはこれまでより難しくなるのでは」など、当事者でない方に保活の大変さを理解してもらうのは容易ではありませんが、当事者にとっても保活はほとんど手探りでこんなことにまで気を配らないといけないのかと思うことばかりでした。
11月3日には日差しが強すぎるくらいの秋晴れ下、東京・日比谷野外音楽堂で開催された「子どもたちによりよい保育を!11・3大集会」に子どもたちの保育園の先生たちと参加してきました。保育士にとってはお手の物の華やかな手作り衣装や仮装、歌にダンス、それに子どもたちの可愛らしい声が飛び交うなど会場は和やかな雰囲気に包まれていましたが、各地の運動交流では深刻な問題についての報告もされていました。訴訟にまで踏み切った、所沢市で育休退園制度やめてと運動している母親からの「子どもにとって保育園の社会というのは、生活そのものであり財産です。それをおとなの都合で簡単に奪わないでほしい」との切実な声に胸を打たれました。
待機児童問題の根っこにある保育所不足、保育士の所得の低さなどの課題にチャレンジするのではなく待機児童数をいかに低く見せるかという視点では何の解決にもならないでしょう。子ども・子育て支援法の施行(2015年4月)に伴い多くの自治体で子育て施策を検討する「子ども子育て会議」が設置されています。このような場で子育て家庭の実態を把握し、国の少子化対策に逆行するような政策ではない自治体の役割を果たしてほしいと切に思います。