コラム24:裁判官の交代
2013.4.30 弁護士 松縄 昌幸
4月は人事異動の時期です。このことは裁判所についても同様で、4月には裁判官の人事異動があります。裁判官は異動の多い職業で、人によって等違いはありますが、だいたい3年毎くらいの頻度で異動があると言われています。異動の頻度が高く、異動になる人が多いため、4月になると担当事件の裁判官が交代することがよくあり、実際にこの4月にも、私が担当している裁判事件のうち何件かで、裁判官の交代がありました。
このように、4月には裁判官が交代することがありますが、裁判官の交代は、訴訟の当事者に大きな影響を与えます。そのうちの一つは、3月下旬頃から4月中旬頃までの間、裁判の期日が入らないことです。というのも、裁判官としても、異動に先立ち準備が必要ですし、赴任してすぐに、記録も見ておらず何もわからない状態で裁判を担当するわけにはいきませんので、記録に目を通して検討する時間が必要だからです。
また、より大きな影響として、前任の裁判官と後任の裁判官とで、判断(心証)が違ってくる可能性があります。裁判官が交代したからといって、それまでの裁判を一からやり直すということはなく、後任の裁判官は、それまでの訴訟の状態を引き継ぐことになります。裁判では基本的に、主張や証拠は書面で提出します(口頭では、主張の全てを正確に理解してもらうことは難しいですし、書面であれば、そのままのかたちで記録に残るからです)ので、後任の裁判官も、それまでに提出された書面を読むことができ、また前任の裁判官から引き継ぎを受けることで、当事者の主張や裁判の経緯を理解することができます。このように、後任の裁判官も目にする書面は前任の裁判官と同じですが、同じ書面を基に判断する場合でも、考え方は人それぞれであるため、判断の結果も人それぞれです。そのため、前任の裁判官は有利に考えてくれていたのが、後任の裁判官は反対の考えであることもあり、その逆もあります。つまり、裁判官が交代することによって、裁判の結果そのものが変わってしまう可能性があるのです。
この他にも、裁判の進行(指揮)の仕方も裁判官によって異なるため、進行の面でも違いが出てきます。
このように、裁判官の交代による影響が大きいため、3月頃から4月頃になると、4月に担当事件の裁判官の異動があるのか、異動がある場合、新しい裁判官としてどんな人が担当になるのかは、とても気になるところです。