コラム12:夫婦同姓を強制する民法は違憲?
2011.2 弁護士 杉井 静子
「夫婦別姓を認めない民法の規定は、個人の尊厳や両性の平等を保障した憲法に違反するとして、東京都と京都府、富山県の男女計5人が、国や自治体に一人当り100万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴することを決めた」(読売新聞/2011年1月7日)というニュースに接しました。
私は、ちょうど昨年末に『たかが姓されど姓』(かもがわ出版)を出版したばかりですので、判決結果はともあれ提訴した勇気に拍手を送りたい気持です。
民法では「夫婦は婚姻の際に定めるところにしたがい夫又は妻の氏を称する」となっていますので、氏(姓)を夫か妻かどちらかの姓に統一しなければ「婚姻届」は受理されません。別姓の夫婦は法律婚としては認められないのです。
しかし憲法24条1項では「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し」とされていて、両性の合意さえあれば婚姻は成立し、夫婦が同姓でなければならないとは規定されていません。民法と憲法とどちらが優先するかといえば憲法です。憲法は最高法規ですから、憲法違反の民法は「無効」です。違憲・無効の民法は速やかに改正されるべきですが、改正されずにまかり通っています。
この訴訟は、1996年に夫婦同姓の強制はやめて選択的に夫婦別姓を認める民法の改正をすべきとの答申が出ている、にもかかわらず10数年も経た今日(しかも民主党政権に交代した今でも)、民法改正案が国会に上程されないことへの市民のいらだち、つまり政治の怠慢への抗議と私はうけとめました。
このところ一票の格差をめぐる訴訟で、違憲あるいは違憲状態という判決が相次いでいます。中には法改正を促す判決もあります。
にもかかわらず政府は国会に改正法案を提出しない。これもまた政治の怠慢です。
裁判は権利を侵害されたものでないと提起できないので「違憲訴訟」を起こすのは、そう簡単ではありません。しかし、私たち国民は、くらしの場で憲法違反の政治が行われないように目を凝らす、言いかえれば、くらしを憲法の視点で見つめ直し、憲法に反する政治を変えるとりくみをすることはいくらでも出来るのではないでしょうか。それが「憲法をくらしに活かす」ことになるのだと思います。
尚『たかが姓 されど姓』は当事務所でも取り扱ってますので、御購読頂ければ幸いです。