成年後見について

1 成年後見制度とは

 成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害等によって物事を判断する能力が十分でない方に、その権利を擁護するための援助者を付け、援助者が本人の利益に沿って活動することで、本人を法律的に保護し、支えるための制度です。
 成年後見制度には、法定後見制度任意後見制度の2種類があり、法定後見制度は、本人の判断能力の程度によって、さらに後見、保佐、補助の3種類に分けられます。
 最高裁判所の発表によると、平成25年における成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で34,548件(前年は34,689件)であり、対前年比約0.4%の減少となっています。もっとも、平成21年においては27,397件であり、その後平成24年まで毎年増加傾向にありました。平成25年12月末日における成年後見制度(成年後見、保佐、補助、任意後見)の利用者数は合計で176,564人となっています。

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2 法定後見制度

① 法定後見制度の必要性

 私達は普段、物を買ったり、住むための家を借りたり、身体の具合が悪くなると病院に行って治療を受けたりする等して生活しています。余り意識していないかも知れませんが、これらの場面では、全て契約が締結され、契約に基づき、義務が果たされています(例えば、物を買うという場面では、売買契約を締結し、売主は目的物を引き渡すという義務を、買主は代金を支払うという義務を果たしています)。このように日常生活を送るにあたっては、契約等の法律行為が必要不可欠となりますが、それらの行為を行うにあたっては、それがどういった内容のことなのか、それによってどのような結果が生じることになるのか等を考え、自分にとって有利なのか不利なのか、適正か不適正か等を判断した上、決断をしています(例えば、物を買うという場面では、その物を使ってどういうことができるか等自分にとってどれだけの価値があるのかを考え、値段と天秤にかけ、買うかどうかを判断しています)。
 しかし、中には、認知症や知的障害、精神障害等により、そのような判断をすることが十分にできない方もいます。しかし、そのような方も、物を買ったりする等しなければ日々の生活を送っていくことはできませんから、契約等の法律行為を行うことが必要不可欠です。また、判断能力が不十分だと、預貯金等の財産管理を十分に行うことができなかったり、自分に不利な内容の契約であっても判断が出来ずに契約してしまう等があります。そこで、そのような判断能力が十分でない方も適正な契約を締結し、契約に基づく法的効果を受けることができるよう、成年後見制度が存在します。
 実際には、預貯金等の管理・解約、施設入所契約、相続手続、不動産の処分等を行うために申立てが行われることが多い傾向にあります。

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② 法定後見制度の趣旨

 先に述べたとおり、判断能力が十分でない方を法律的に保護する仕組みが必要です。このような考え方自体はかなり前からあり、成年後見制度が誕生する前は禁治産、準禁治産制度が存在しました。
 もっとも、判断能力が不十分な方も独立した一人の人間である以上、個人として尊重されなければなりません。そこで、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション(障害のある人も、社会の中で、できるだけ障害のない人と同じように生活できるようにすること)という理念も重要となります。
 これらの理念と本人保護の理念との調和の観点から、2000年4月、禁治産、準禁治産制度に代わって、成年後見制度は誕生しました。

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③ 法定後見の申立て

 援助者である後見人等を付けるためには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
 申立てをすることができる申立権者は法律で定められており、本人、配偶者、四親等内の親族(兄弟姉妹、いとこ等)等が申立てをすることができます。
 申立てがあると、裁判所が必要に応じて、申立人からの事情聴取、本人の陳述聴取、後見人等候補者の調査、親族照会、本人の判断能力についての鑑定等を行い、本人の判断能力の程度や候補者の後見人等としての適正等について審理します。その結果、申立てに理由がある場合には申立てを認めるとともに職権で後見人等を選任し、理由がない場合には申立てを却下する審判をします。後見等開始の審判が確定すると、その事実は後見登記に登録されることになります。
 なお、従来は審判がなされるまで申立ての取り下げが可能でしたが、平成25年1月から施行された家事事件手続法により、申立てを取り下げるためには、審判がなされる前であっても家庭裁判所の許可が必要になりました。

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④ 法定後見のご相談は

 法定後見の申立てにあたっては、様々な種類の書類が必要となりますが、これら書類の収集、作成が大きな負担となることが多くあります。また、中には、速やかに後見等開始の審判を出してもらう必要のあるケースもありますが、当初から必要かつ十分な書類を提出することで初めて、短期間で審理を終わらせることが可能になります。そのため、弁護士が関与した方が、より確実かつスムーズに手続を進めることができます。
 また、適当な後見人等候補者がいない場合、弁護士が後見人等に就任することも可能です。最高裁判所の発表によると、平成24年においては、弁護士等の親族以外の第三者が後見人等に選任されたものは全体の約51.5%であり、制度開始以来、初めて親族以外の第三者が後見人等に選任された数が、親族等が後見人等に選任された数を上回りました。そのことは平成25年においても同様であり、親族以外の第三者が後見人等に選任されたものは全体の約57.8%でした。申立てにあたっては、後見人等の候補者を挙げることができますが、申立ては可能だが後見人等に就任することはできない等の理由で適当な親族候補者がいないこともあります。その場合でも、一定の要件を満たした弁護士であれば、申立てにあたって後見人等候補者となり、後見人等に選任されることも可能です。

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3 任意後見制度

① 任意後見制度とは

 本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分となる事態に備えて、自ら選んだ援助者と公正証書で任意後見契約を結んでおき、実際に本人の判断能力が不十分になったとき、あらかじめ結んでおいた任意後見契約に従い、援助者である任意後見人が本人を援助する制度です。
 つまり、判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になったときにやって欲しいこと(後見事務の内容)とそれをやって欲しい人(任意後見人)を決めておく制度です。

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② 任意後見の申立て

 あらかじめ公正証書で任意後見契約を結んでおくことが必要です。
 その後、本人の判断能力が不十分になったとき、援助者である任意後見受任者等が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、任意後見契約の効力が発生して任意後見受任者は任意後見人になり、任意後見契約で定められた事務を行うことになります。

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③ 任意後見のご相談は

 任意後見監督人選任の申立件数は、平成12年4月から平成13年3月までの1年間は51件であったのが、平成24年の1年間は685件、平成25年は716件となっており、毎年、増加傾向にあります。
 法定後見制度では、やって欲しいことをやって欲しい人にやってもらうことが難しいことがありますが、任意後見制度では、本人の意思がより重視されることになります。判断能力が不十分になった後に内容を追加することはできませんので、できるだけ自分の意思を反映して後見事務をやってもらうためには、いろいろな事態を想定し、やって欲しいこと(後見事務の内容)とそれをやって欲しい人(任意後見人)をしっかり決め、予め過不足なく契約書を作成しておくことが重要になります。

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