コラム6:労働相談と多摩地区での労働審判彦
2010.4 弁護士 杉野 公彦
ひめしゃら法律事務所での定例相談をはじめて、そろそろ1年になりますが、内外に告知してきた甲斐もあり、徐々に相談件数も増えてきたように思えます。
相談内容にはそれこそ様々なものがありますが、最近では、昨今の不景気を反映してか、「突然会社から解雇を言い渡された」、「これまで何度も契約を更新してきたにもかかわらず突然雇止めを言い渡された」、「給料(または残業代)を払ってくれない」などの労働問題が増えてきたなと感じています。
特に、突然の解雇や雇止め(これも実質的には解雇でしょうが)は、いずれも労働者の明日からの生活に関わる重大な問題ですが、会社はあまりにも無計画に、そして法律上の正式な手続きも踏まずにそれらを行っているのが残念ながら現実と言えます。
さて、そのような労働相談を受け、事件として受任した場合、我々が代理人としてすべきこととして、会社と直接交渉することがありますが、会社が任意の交渉に応じなければ、裁判所を通じての手続きに移らざるを得ません。
裁判所を通じての手続きとしては、裁判(又は簡易裁判所の民事調停)、平成18年4月からは労働審判を選択することができるようになりました。
労働審判手続とは、労働審判官(裁判官)1人と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2人で組織された労働審判委員会が、個別労働紛争を、原則として3回以内の期日で審理し、適宜調停を試み、調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行うという紛争解決手続です。
労働審判手続きによれば、最近の国鉄職員のJR不採用事件のような時間がかかる裁判によらず、事件を迅速、適切に解決することができるメリットがありますが、本庁の裁判所でしか行えないというデメリットがありました。つまり、多摩地区の住民である労働者が、多摩地区にある会社を相手取って申立てる場合でも、本庁のある霞ヶ関で申立をせねばならず、多摩地区の市民にとっても多摩の弁護士にとっても使いづらい制度だったのです。
しかし、裁判所に働きかけ続けた我々の先達たちの努力により、ついに平成22年の4月より東京地方裁判所立川支部においても労働審判手続きを申立てることができるようになりました。
裁判所を通じた専門性のある紛争の解決を、迅速に行うことができる労働審判手続きの実施は、多摩地区で生活する市民の皆様に対する司法サービスの充実に向けての大きな一歩と言えるでしょう。不当な解雇や給料不払い、セクハラなど労働問題でお困りの方は是非利用していただきたいと思います。
また、ひめしゃら法律事務所では今後も労働相談を含む法律相談を受け付けております(もちろん労働審判の代理人も引き受けております)ので、是非ご利用ください。