民法・不動産登記法の改正~所有者不明土地問題の解決に向けて~
1 はじめに
「最近、近所に空き家が増えたな~。」とお思いの方も多いと思います。民法における「所有者不明土地」とは、不動産登記簿を見ても所有者が誰であるか分からない不動産のことを言いますが、2017年の調査で何と九州を上回る約410万ヘクタールが所有者不明土地となっているとのことでした。
大変もったいない話ですし、空き家の隣人にしてみれば、伸びてきた枝を切ろうにも、誰に連絡したら良いか分からず、困ったことになってしまいます。
これらの問題に対処するため、民法・不動産登記法の改正が行われた他、相続土地国庫帰属法が成立し、本年(2023年)4月より順次施行されますので、本コラムで簡単にご紹介したいと思います。
2 所有者不明土地の予防
所有者不明土地が発生する原因として、相続が開始しても、相続登記が行われない、ということがあります。
遺産分割は、期限が無いので、ややもすると遺産分割がまとまらない限り、いつまで経っても被相続人名義の登記が残ってしまうことになります。時が過ぎて、お孫さんやひ孫さんの代になり、数次の相続が起きて相続人が数十人!(メガ共有というのだそうです)という事態となります。
そこで、相続が開始されたら、直ちに、相続登記をしなければならないこととされ、これを怠ると、過料の制裁を科すことができるようになりました。相続があったらまず、法定相続分に従って、登記名義を変えてください、とお願いすることになります。
次に、相続開始後、遺産分割がまとまらないまま10年経つと、特別受益、寄与分といった、相続分を変更するような主張はできず、単純に、法定相続分に従った遺産分割審判がなされることになりました。
そして、このような土地は、厳しい要件のもと、10年分の管理費を支払うことによって、土地を国庫に帰属させることができるようになりました。
3 所有者不明土地の利用
まず、民法の相隣関係の規定が改正され、隣家に立ち入ったり、枝葉を切ったりする等の、隣地の使用に関する制度が整備されることになりました。
次に、共有の規定も改正され、相続が繰り返され、共有者が数十人となり、不動産を管理しようにも、皆の意思が確認できないような事態を避けるための制度が整備されました。
最後に、所有者不明土地・建物管理人と、管理不全土地・建物管理人という制度ができました。
現在の法律では、空き家を管理、処分するためには、相続財産管理人を選任してもらうことになりますが、この場合、相続人がはっきりしない被相続人の相続財産全てを管理することになり(人単位の管理)、業務が大変になります。そこで、所有者が分からない、あるいは管理がなされていない不動産ごとに(物単位の管理)、管理人を選任する制度が創設されました。
この管理人は、裁判所により選任され、所有者不明土地等の管理を行い、さらに裁判所の許可を得て、不動産を売却できるようにもなりました。
4 これら法改正で、空き家問題の処理は大きく進む可能性があります。他方、地域によっては、不動産を処分しようにも、財産価値の殆どない物件も多く、その場合はどうするのかな?という疑問も残ります。