コラム23:ダブルスタンダード
2013.3.4 弁護士 宮本 康昭
暮れから正月にかけて読んだ岩波新書4冊の著者が、気づいてみるとみんな女性でした。女性のものを意識して選んだわけではないので、女性が近頃著しくすぐれた仕事をしていることを示しているのだと思います。その中の1冊大治明子「勝てないアメリカ」と、これは岩波新書ではないのですがもう1冊、重信メイ「『アラブの春』の正体」(角川ONEテーマ そうですね。これも女性ですね)。どちらも現場で問題に肉迫した著作です。
その現場とは、いずれも中東地域なのですが、共通してアメリカの国際政治におけるダブルスタンダードが指摘されていて面白いです。アサドの市街地爆撃は非人道的といって非難するが、イスラエルのヨルダンの非戦闘員への攻撃は支持するとか、イラクの市民虐待を非難するのに自分ではグアンタナモ基地にジュネーブ協定違反のイラク人拘束・拷問をする、などというのは序の口で、イランの核開発は「ならず者国家」と指弾するのにイスラエルの核保有には知らぬ顔といった調子。これではアメリカは世界から信用されません。「ならず者国家」と言えば、北朝鮮の地下核実験には最大級の批判を浴びせますが、自分の国では日常茶飯に地下核実験をやる、地上での実験だってついこの間やめたばかりですし。当の北朝鮮もミサイル発射実験を非難攻撃するアメリカが、その直後の韓国のミサイル発射実験について何も言わないのはダブルスタンダードだと言っています。北朝鮮を特に応援するつもりはありませんけど、北朝鮮の、この反応は正しいでしょう。
国際社会で鉄面皮にダブルスタンダードを押し通すアメリカは、自らの言説と行動についての説得力を失いますます「勝てないアメリカ」になっていくでしょう。わが国の政治的指導者たちもアメリカの言いなりばかりになっていると同じことを言われますよ。