コラム27:今こそブラック企業対策を
2013.8.26 事務局員 日下 努
みなさん、ブラック企業という言葉を知っていますか。7月におこなわれた参議院選挙でも、若者の雇用問題に関連して「ブラック企業」という言葉が大きな話題となりました。自民党から立候補して、当選した実業家の人がブラック企業の創業者としてマスコミと有権者から注目を集めていたので、ご存知の方も多いと思います。
そもそもブラック企業という単語が誕生した背景には、労働者に対し過酷なノルマを課したり、長時間労働(サービス残業含め)、上司からのパワハラ・イジメ、低賃金などが横行し、労働基準法が全く適応されていない企業の総称として使われています。2000年代後半から、インターネット上で若者達が自らの働く環境を表現するのに使われはじめ一般化した言葉です。2008年にはブラック企業を題材にした映画も作られ、同じ年には戦前の作家小林多喜二が著した『蟹工船』がブームにもなりました。また2008年秋頃には「派遣切り」、その年の年末年始には年越し派遣村ができるなど、社会的にも雇用問題は大問題となり、2009年には、国民に期待された民主党政権になりましたが、労働法制の前進的改正はなされませんでした。
8月11日に、「ブラック企業大賞2013」が発表されました。大賞には大手居酒屋チェーン、特別賞には国立大学、業界賞には人気女優をCMに起用していたアパレル企業、教育的指導賞は通信教育・出版の企業がそれぞれ受賞しました。これら企業に共通していることは、長時間の過重労働のため痛ましい死亡事故が起きていることです。
労働基準法違反をする企業が増えている以外にも、1990年代からの労働者派遣法の拡大などや、正規雇用をパート・派遣・契約などに置き換えた企業や官公職場が激増しました。失業や低処遇の労働環境の蔓延は、女性を含め特に若い世代に実害が集中してきました。
一方で6月に出された政府の規制改革会議の答申と、8月の厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告によれば、現在の労働者派遣制度を根本から変え、正規雇用を派遣に置き換える障害を取り除くものにしようとしています。低処遇で不安定な雇用形態の広がりは「ブラック」状態を拡大し、若者だけではなく、すべての働く者のくらしを困難にし、景気の改善をもつくることはできません。一刻も早くブラック企業対策を講じてほしいものです。