自然と人間の共生 ⑰:慣れこそ怖いものはない?
記録的に早い(6月中)の梅雨明けでした。これも温暖化のあらわれでしょうか。
温暖化で、絶滅が危惧されているアフリカ、マダカスカル島のキツネザルがさらに苦境に追いやられているといいます。キツネザルは竹を食べて生きていますが、温暖化が進み今よりもっと林が乾燥すると、タケノコが手に入らない事態が予想されるからです。
アメリカやカナダに生息するカンジキウサギは、冬に大量の雪が積もると茶色から白い毛に変わります。いわゆる保護色です。ところが、冬になっても雪が積もらなくなった地域では、茶色のウサギが発見されましたが、遺伝子が異なるそうです。動物は環境の変化で遺伝子も変わってしまうのですね。
子どもに対する暴力・虐待が深刻になっていますが、暴力や暴言で子どもの脳が変形するといいます。人間の脳は成熟の過程で強いストレスがかかると苦しみを回避しようとして脳の「前頭前野」が委縮するという報告がされています(2018年5月26日付朝日新聞「フロントランナー」友田明美医師のインタビュー)。
第二次世界大戦下でドイツ軍将兵は何を考えていたのか。殺害に慣れて人が人でなくなる様を書いた「兵士というもの」(みすず書房)もショックでした。捕虜収容所の隠しマイクでの記録では、ドイツ兵が残虐行為について「すごく楽しかった」などと話しているのです。
人間にとって〝慣れ〟は〝思考停止〟につながります。目の前の生活や仕事に追いまくられるのではなく、事実をリアルに見て、学習し、対話することがとても大事ですね。
【「学習の友」8月号からの転載】