小平のお話
小平市に住み11年ほどになります。我が家の近所には広大な畑と小さな森があり、とても東京都とは思えない緑豊かなところです。
普段何気なく使っていた畑道、地元の人には「たから道」と呼ばれている道があります。うっそうと木々に囲まれた小道で、夏はカブト虫やクワガタ虫がとれます。「小平ちょっと昔」という本によると、たから道は青梅街道の南側にあり、各家の庭先を結んでいた道のことで、北風の来ない南に面した日当たりのいいところにあり、青梅街道を通らなくても行き来できたそうです。また農家の広い庭(農作業)を“たから”と言い、その庭を繋いでいた道のこともいうようです。
またこの小道のわきにある森について、以前わが子が通う小学校の地域学習で知りましたが「屋敷森」と言い、家屋を守る防風林の役目をしているそうで、“秩父おろし筑波おろし”と呼ばれる砂混じりの冷たい北風(確かにうちのあたりは春先恐ろしいほど強い風が吹きます)を防ぎ、夏から秋は台風対策になり、ここに暮らす人々の知恵で、青梅街道、五日市街道、江戸街道によくみられるそうです。樹種はケヤキ・カシ・シイ・スギ・タケ等だそうで、確かに、青梅街道、五日市街道沿いのお屋敷の近くに大きなケヤキの木を見かけます。このようなことを知ると我が家の周辺は昔々の人々の生活の跡がそのまま残っているようで、何十年も前の人もこの道を通り生活をしていたのかなと思うと柄にもなくロマンを感じてしまいます。
子ども達の遊び場としては小平中央公園があります。小平中央公園は緑豊かな玉川上水のすぐ脇にあり、夏は虫取りと玉川上水に降りて(良い子は降りてはいけません)、水遊びをしています。この近くに「久右衛門橋」があり(名主久右衛門がその名の由来とのこと)、この久右衛門橋付近には船溜まりがあったと聞いたことがあります。小平市のホームページによると、「船溜まりとは玉川上水に船が通っていたころの船着き場のこと」です。船は通っていたのは明治3年から明治5年のこと(水質保全のため通船は禁止)。船は多摩川上流から羽村の堰へ入り、玉川上水を通って四谷大木戸まで物産や人を運んでいたそうで、その途中の立ち寄り場所を「船溜まり」といったそうです。小平市内の船溜まりは、小川橋・久右衛門橋・喜平橋・茜屋橋・小金井橋の各付近にあったそうで、この橋の付近をとおると、「かつてはここに船が通っていたのだなぁ」と昔に思いをはせたりします。
小平市では2013年に道路の建設をめぐる住民投票があり不成立で終わりました。投票率が35%と開票する条件である50%に届かなかったためです。東京都が作ろうとしているのは、幅32~36メートル4車線の広い道路で五日市街道から青梅街道まで約1.4キロメートルを平面でまっすぐな道路を作る計画です。玉川上水遊歩道が分担され36メートルの橋が架かり、中央公園の雑木林の真ん中を通るものだそうで、この計画だと小平の豊かな自然がどうなってしまうのかとても心配です(久右衛門橋は残るのか?)。現在は地権者の方々が起こした訴訟が継続していているそうです。(あくまで個人的意見ですが、東京都が計画するような広い道路はそもそも必要なのか?と疑問です。)
一市民として、子ども達のために、今の素晴らしい自然がなるべく多く残る方向になってほしいと心より希望します。