コラム55:「ゴミ屋敷」がなんと「文化遺産」に変身!
2017.6.16 弁護士 藤原 真由美
この1年間、多摩支部長をつとめた間に多摩地域の自治体にアンケートをとったりしてわかったことは、「空き家問題」が、自治体の重要なテーマになっていることです。子どもの独立、結婚を機に、高齢者だけの世帯が増加。その高齢者が他界し、相続手続きが進まずに「空き家」が増加しているのですね。皆さんの中にも、両親が住んでいた自宅が空き家になったままほったらかし……という方がいらっしゃるのでは?
「空き家」を取り壊すにも費用がかかりますし、家があった方が土地の固定資産税が安くてすむなど、「ほったらかし派」にもそれなりの理由があります。でも、老朽化した家は、いずれ「ゴミ屋敷」となって、街の「めいわくな存在」に。
そこで、「空家等対策の推進に関する特別措置法」なる法律が成立し、自治体が強制的に、老朽化して迷惑な存在となった「特定空き家」を取り壊すことができるようになったのですが、所有者の同意も得ずに、人の家を一方的に取り壊すって、ちょっと抵抗を感じますよね。何かうまい方法はないかと考えていたときに偶然出会ったのが、尾道市(広島県)の「空き家再生プロジェクト」でした。
その昔、造船業で栄えた尾道市は、坂の多い街に、個性的な洋館が点在。誰も住まなくなった洋館は、次第に「ゴミ屋敷」と変貌していったのですが、この「おもしろ物件」に目をつけたある女性が、地元の建築士と一緒にNPO法人「空き家再生プロジェクト」を立ち上げたのです。自治体からの補助金をもらいながら、尾道の歴史と建築物の魅力を再発見するピクニックやセミナー、放置された家財道具の「のみの市」、チャリティーイベント開催など、逆転の発想で会員を増やし、次々と「空き家」を再生させることに成功。中には、重要文化財に認定された「再生空き家」もあったとか。
「これだ!」と思いました。一見めいわくなゴミ屋敷を、多摩地域の街づくりと一緒に魅力的に再生させる人材やノウハウは、必ず見つかるはず。適正な相続・不動産の管理といった法律業務に加え、自治体と協力して、こんな取り組みにも手を広げはじめている私です。