故郷の地を考える
みなさん、「ゴールデンカムイ」(作者:野田サトル/集英社)という漫画をご存知でしょうか?
物語は、今から100年以上前の明治末期、日露戦争終結直後の北海道・樺太を舞台とした、金塊をめぐるサバイバルバトル漫画で、2014年から2022年にかけて週刊雑誌に連載され、アニメ化と映画化(実写版)もされた大人気漫画です。
また、アイヌ文化を丁寧に描いていたことから、北海道アイヌ協会などからも高評価を受けていました。私もこの漫画をつうじてアイヌと北海道の歴史や文化などによりいっそう興味を持つようになりました。
実は私自身も北海道の出身で、少しはアイヌと北海道の歴史を知ってはいましたが、それはすべて日本政府の見解を基にした知識でしかなかったことに気づかされました。
「ゴールデンカムイ」はヒロインであるアイヌの少女アシㇼパをとおしてアイヌの文化やくらし、それと日本政府(和人)と大国との挟間で翻弄されたアイヌと北海道の歴史が描かれています。
アイヌ(先住民)の視点では、そもそも北海道(蝦夷)はアイヌが住んでいた大地であり、アイヌのものでありました。そこに15世紀ころから和人が入植してきてアイヌと北海道支配にのり出してくるのです。そして明治期には完全に北海道を「日本」の領土にし、アイヌ文化とアイデンティティを否定し、アイヌの人を日本人に組み込んでしまったのです。
現在は、ヨーロッパ諸国でも、かつてアジアやアフリカ、南アメリカなどで植民地政策をとり、多くの先住民の命と文化を踏みにじってきた歴史があり、それに対する批判と反省がされて、先住民の権利回復と文化の尊重が行われています。
その国際的な流れもあり、日本でも2008年に国会で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を全会一致で採択され、その後さまざまな施策を行われてきました。私の故郷(地元)にはアイヌ文化の復興・創造・発展のための拠点となる大きな施設を建設されており、有料ですが見学することができアイヌの文化に触れることができます。そのような政策がとられていますが、現在のアイヌの人々の権利回復や補償がされているわけではありません。
大国が犯した先住民の権利侵害と、その回復の課題は今後も引き続き取り組まれるものであります。その教訓を活かし、この21世紀でも世界中で行われている紛争を一刻も早く解決することを願わずにいられません。