自然と人間の共生㉑:民衆の歴史から学ぶ
紅葉が美しい時期に、なんと桜の開花情報が39都道府県計354件寄せられたそうです。桜の花芽は7月頃にできますが、つけ根にある葉が花芽の成長を抑制する植物ホルモンを送り込むため、ふつうは秋に開花することはありません。が、今年は台風の暴風で葉が落ちてしまい、そのあと高温の日が続いたので、花芽の成長がとまらなくなったからです。
桜といえば、ソメイヨシノですが、約150年の歴史があります。明治維新直前頃に、東京に出現し、明治5年に初めて「染井吉野」と名づけられたとのこと。その後、地域住民の手で川沿いや街道、公園に植えられ、その景観は日本を象徴するものになってます。
今年は、明治150年。安倍首相は「明治の精神に学び、日本の強みを再確認する」といっていますが、前半は侵略戦争と植民地支配の歴史だったことを忘れていないでしょうか。明治からをふりかえるならば、自由民権運動など、民衆の歴史から学ぶべきでしょう。自由民権結社は、1874年から90年までの17年間で2128を超え、その運動のなかで、私擬憲法(民間憲法草案)が生まれました。
先日、五日市憲法草案が50年前の1968年に発見された深沢家の土蔵や五日市郷土館を訪ねてきました。「国民の自由と権利の保障」「三権分立」「地方自治」など、その精神は地下水脈で現憲法とつながっています。
しかし、204ヵ条に及ぶ成案にこぎつけられたのは、起草者・千葉卓三郎の力だけではありません。五日市学芸講談会、五日市学術討論会など地域の民衆の議論の場がベースにありました。民衆のなかに根づいていた、自分たちが歴史をつくるのだという気概に大いに学びたいものです。
【「学習の友」12月号からの転載】